『シャーロック・ホームズの冒険』 シネマ・サーフィン~13~
今日は【世紀の名探偵登場】の時間です。
久々~、こんばんは、ロッカリアです。
皆様方、ご機嫌麗しゅうございます。秋の夜長の~と題したこの企画、始めてみるとまだまだ初夏を感じるような暑さが続いている関西地方です。
秋は一体何処へ行ってしまったのでしょうか……。
さて、本題に。
今から30年以上も前に、深夜の洋画劇場(←くう~、いい響きだっ!)で見てから、ホームズの映画と言えばコレ意外には認められなかった作品。
今でこそ歳を取り、それなりに寛容になったので目くじらを立てる事も無くなったが、海外のミステリー小説を読み漁っていた頃、これこそがミステリー映画だっ!と感動した事を懐かしく思い出す。
”白いカナリア、三つの棺、謎の女にネス湖の怪物……”
退屈を持て余していたホームズの所へ、河で溺れていた女が運ばれて来た。
この女、何者かに襲われ、一時的に記憶を失っていたが、翌朝、疾走した夫を探しにロンドンへとやって来た事を思い出す。
そして、ホームズ本人が目の前にいると分かると、夫の捜索を依頼した。
ホームズは、何かに惹かれて、この事件を引き受ける。
だが、この失踪事件の裏には巨大な陰謀が隠されていて、ホームズは巻き込まれて行く事になる……。

この映画のオープニングは、ワトソンの死後50年後に開封する事になったトランクの中から、パイプ、虫眼鏡、聴診器と言ったお馴染みのアイテムが次々と出て来るのに混ざって(この出だしで、観客の心を鷲づかみにするあたり、さすがビリー・ワイルダーである)、一つの小説が現れる。これはホームズの最も私的な事件を取り扱ったもので、この小説の封印が解かれる所から、この物語は始まる。
一見、無関係に見える、ロシアのプリ・マドンナの求婚から始まり、謎の女性や無言の修業を積む修道僧などのエピソードに、見事なまでの複線が貼られていて、無駄がない。
実はこの映画、上映時間2時間5分となっているが、撮影された当時は4つのエピソード、4時間に及ぶ超大作だったのだ。
だが、あまりにも長すぎたため、配給会社の要請でカットするはめになってしまった。
一部のワイルダー・ファンからは、いつもと違う、シリアス過ぎるなどの批判が生まれたが、これはカットしてバランスが悪くなったためだった。(僕は決してそんな事は無いと思うけど…)
その、カットされたエピソードに中に、実はミステリー小説ファンが、あっと驚くものが撮影されていたのを、皆さんは知る由もないだろう。
それは、全てが逆さまになった部屋で起きた殺人事件を、ホームズが見事解決してみせると言うものだ。
「全てが逆さまの部屋で起きた殺人事件」と聞いてピンとくる人は、往年のミステリー・ファンだろう。
僕も直ぐに、「アレかっ!」と驚いた。
アレとは、エラリー・クィーンの「チャイナ・オレンジの秘密」だ。
この小説が世に出たのが1933年の事だから、明らかにこれが元ネタになっている。
と言う事は、ホームズがクィーンの謎を解明したと言う、ミステリー・ファンにとってこれほどのサプライズもあるまい。
残念な事に、カットされたフィルムは既に存在しない。ただ、持っているDVDの特典映像に収められているスチール写真で見る事が出来る!
それがこいつだ! ↓ ↓ ↓

この異様な光景を見よ。
この難事件に、ホームズが如何に挑んだのか?知りたいのは僕だけではあるまい。(配給会社のバカやろ~っ!)
この映画の中で、シャーロックの兄を演じたマイクロフト役のクリストファー・リーが、インタビューで面白い事を語っている。
コナン・ドイルの実の弟と友人だったクリストファーは、その弟から「クリケット選手の二人、シャーロックとホームズから、名探偵の名を頂いた」と聞かされたと言う。
また、彼が俳優として最もインスパイアされたのがビリー・ワイルダーで、こんなエピソードも話している。
過去にホームズ役をやった事があるクリストファーだが、TV用に前編後編に切られたり、主演した映画のセリフが他の俳優に吹き替えられたり、ドラキュラ俳優=ゲテモノ役者扱いだった。
そんな自分が何故名匠ビリー・ワイルダーの映画に?
そう疑問を持っていた彼が、スコットランド・ロケの時だった。
夕暮れの中で、コウモリが飛び始めた。
それを見たビリー・ワイルダーは、彼にこう言った。
「昔が懐かしいだろう……」
ビリーは全て知っていたのだ。
役者は過去に囚われることなく、常に前進するものである。
そして、クリストファーの役者としての素晴らしい素質を見抜いていたのだ。
後に、スピルバーグ、ジョージ・ルーカス、ピーター・ジャクソン、ジョー・ダンテ、マーチン・スコセッシ、ティム・バートンなどの一流監督が、競って彼を起用する現状が、それを雄弁に語っている。
恐るべしビリー・ワイルダーであり、素晴らしきクリストファー・リーである。
監督が監督なら、役者も役者である。
だから僕は、映画マニアをやめられないのだ。
最後に、ホームズをピーター・オトゥール、ワトソンにピーター・セラーズ、と言うキャスティングも予定されていたらしい。(ん~、こちらも見てみたかったなぁ…)
そして、ワトソンは何故この事件を封印しなければいけなかったのか?
この謎が、最後の最後に涙と共に明かされる……。(見事だ…)
今回のミステリー特集は一応ここまで。
改めて感じたのは、もう少し前から準備が必要だと言う事。更新が遅い遅い……。
その点を踏まえて、年末には「東宝特撮映画まつり」みたいなものをやってみようかなぁ……。
久々~、こんばんは、ロッカリアです。
皆様方、ご機嫌麗しゅうございます。秋の夜長の~と題したこの企画、始めてみるとまだまだ初夏を感じるような暑さが続いている関西地方です。
秋は一体何処へ行ってしまったのでしょうか……。
さて、本題に。
今から30年以上も前に、深夜の洋画劇場(←くう~、いい響きだっ!)で見てから、ホームズの映画と言えばコレ意外には認められなかった作品。
今でこそ歳を取り、それなりに寛容になったので目くじらを立てる事も無くなったが、海外のミステリー小説を読み漁っていた頃、これこそがミステリー映画だっ!と感動した事を懐かしく思い出す。
”白いカナリア、三つの棺、謎の女にネス湖の怪物……”
退屈を持て余していたホームズの所へ、河で溺れていた女が運ばれて来た。
この女、何者かに襲われ、一時的に記憶を失っていたが、翌朝、疾走した夫を探しにロンドンへとやって来た事を思い出す。
そして、ホームズ本人が目の前にいると分かると、夫の捜索を依頼した。
ホームズは、何かに惹かれて、この事件を引き受ける。
だが、この失踪事件の裏には巨大な陰謀が隠されていて、ホームズは巻き込まれて行く事になる……。

この映画のオープニングは、ワトソンの死後50年後に開封する事になったトランクの中から、パイプ、虫眼鏡、聴診器と言ったお馴染みのアイテムが次々と出て来るのに混ざって(この出だしで、観客の心を鷲づかみにするあたり、さすがビリー・ワイルダーである)、一つの小説が現れる。これはホームズの最も私的な事件を取り扱ったもので、この小説の封印が解かれる所から、この物語は始まる。
一見、無関係に見える、ロシアのプリ・マドンナの求婚から始まり、謎の女性や無言の修業を積む修道僧などのエピソードに、見事なまでの複線が貼られていて、無駄がない。
実はこの映画、上映時間2時間5分となっているが、撮影された当時は4つのエピソード、4時間に及ぶ超大作だったのだ。
だが、あまりにも長すぎたため、配給会社の要請でカットするはめになってしまった。
一部のワイルダー・ファンからは、いつもと違う、シリアス過ぎるなどの批判が生まれたが、これはカットしてバランスが悪くなったためだった。(僕は決してそんな事は無いと思うけど…)
その、カットされたエピソードに中に、実はミステリー小説ファンが、あっと驚くものが撮影されていたのを、皆さんは知る由もないだろう。
それは、全てが逆さまになった部屋で起きた殺人事件を、ホームズが見事解決してみせると言うものだ。
「全てが逆さまの部屋で起きた殺人事件」と聞いてピンとくる人は、往年のミステリー・ファンだろう。
僕も直ぐに、「アレかっ!」と驚いた。
アレとは、エラリー・クィーンの「チャイナ・オレンジの秘密」だ。
この小説が世に出たのが1933年の事だから、明らかにこれが元ネタになっている。
と言う事は、ホームズがクィーンの謎を解明したと言う、ミステリー・ファンにとってこれほどのサプライズもあるまい。
残念な事に、カットされたフィルムは既に存在しない。ただ、持っているDVDの特典映像に収められているスチール写真で見る事が出来る!
それがこいつだ! ↓ ↓ ↓

この異様な光景を見よ。
この難事件に、ホームズが如何に挑んだのか?知りたいのは僕だけではあるまい。(配給会社のバカやろ~っ!)
この映画の中で、シャーロックの兄を演じたマイクロフト役のクリストファー・リーが、インタビューで面白い事を語っている。
コナン・ドイルの実の弟と友人だったクリストファーは、その弟から「クリケット選手の二人、シャーロックとホームズから、名探偵の名を頂いた」と聞かされたと言う。
また、彼が俳優として最もインスパイアされたのがビリー・ワイルダーで、こんなエピソードも話している。
過去にホームズ役をやった事があるクリストファーだが、TV用に前編後編に切られたり、主演した映画のセリフが他の俳優に吹き替えられたり、ドラキュラ俳優=ゲテモノ役者扱いだった。
そんな自分が何故名匠ビリー・ワイルダーの映画に?
そう疑問を持っていた彼が、スコットランド・ロケの時だった。
夕暮れの中で、コウモリが飛び始めた。
それを見たビリー・ワイルダーは、彼にこう言った。
「昔が懐かしいだろう……」
ビリーは全て知っていたのだ。
役者は過去に囚われることなく、常に前進するものである。
そして、クリストファーの役者としての素晴らしい素質を見抜いていたのだ。
後に、スピルバーグ、ジョージ・ルーカス、ピーター・ジャクソン、ジョー・ダンテ、マーチン・スコセッシ、ティム・バートンなどの一流監督が、競って彼を起用する現状が、それを雄弁に語っている。
恐るべしビリー・ワイルダーであり、素晴らしきクリストファー・リーである。
監督が監督なら、役者も役者である。
だから僕は、映画マニアをやめられないのだ。
最後に、ホームズをピーター・オトゥール、ワトソンにピーター・セラーズ、と言うキャスティングも予定されていたらしい。(ん~、こちらも見てみたかったなぁ…)
そして、ワトソンは何故この事件を封印しなければいけなかったのか?
この謎が、最後の最後に涙と共に明かされる……。(見事だ…)
今回のミステリー特集は一応ここまで。
改めて感じたのは、もう少し前から準備が必要だと言う事。更新が遅い遅い……。
その点を踏まえて、年末には「東宝特撮映画まつり」みたいなものをやってみようかなぁ……。
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