1991年、真理子(ミポリン)の結婚式に集まった旧友4人が、車で湘南に向かうトンネルを抜けると、1982年、彼らが青春を過ごした時代の物語がスタートする。
オープニングで、ミポリンが織田裕二意外の男性と式を挙げているのだから、我々はこの後、二人はどうして結ばれなかったのか?と言う切ない青春を目撃する事になる。
確かに悲恋に終わるのだが、この映画は友人も含めて湘南海岸の身にFM局で過ごしたその時代が、どんな形にしろ、決して無駄に終わる事無く、むしろ光彩を放っていたんだよ、と言う所に重心が置かれている。
1982年、彼らは大学4年と言っているので、年齢で言うと僕と同級生(あくまで設定上)と言う事になる。
実際は1991年公開だから、31歳の時に、青春を振り返る事になったが、50歳を過ぎた今の方が、この映画はより大きな意味を持ち、僕にとっても大切な作品になって来た。

82年と言えば、ぎりぎりアナログの時代で、この映画の中のミニFM局KiWiにも、LPレコードのストックが大量に置かれていて、それをDENON(昔でんおん、今デノン)のレコード・プレイヤー(昔テクニクス、今パナソニック)に乗せオンエアしている。
また、電波マニアが、トランスミッターの中継ポイントに必ず携帯するのがソニーのスカイセンサーと言う、その昔、ウォークマン登場以前に大流行した短波付ラジオだ。そして、よく見ると、ガラス越しに湘南の海とビーチが見える局のスタジオにも、ナショナルのクーガーと言うラジオだって置いてあるのだ。(懐かしい~)
超若い松下由樹が乗っている原チャリ(ヤマハのポップギャル!)だが、当時はノーヘルでオッケーだったんだよね。(僕はパッソーラ、モンキー、ノーティー・ダックス何てのに乗っていました)
サーファーご用達の黄色のビートル(本当はカリフォルニア・ブルーがトレンドだったんだよ)とダットサンのトラックも懐かしいね。
織田ちゃんと松下がはめている腕時計は、セイコーのダイバーズ・モデルで、織田ちゃんの方がブラック・モンスター、松下の方がオレンジ・モンスターと呼ばれている機械式の自動巻きで、めっぽう海水に強いのだ。
映画に影響を受けやすい僕は、当然ながらこいつを買っちまって、夏になれば、サーファー気分でこれをはめている。
![DSCF0107[1]](https://blog-imgs-42-origin.fc2.com/c/i/n/cinemakan/201306252059583ee.jpg)
ミポリンがDJの時に使っているヘッドフォンはゼンハイザーで、昔からオーディオ・ファンの憧れの的だった(何せ、高いんだよヘッドフォンのくせに…)。
この映画の印象を今に受け継がせているのが、ユーミンの楽曲をも取り込んで、全編に流れるAORだ。
ウェスト・コースト色の強い選曲で、J.D.サウザー、TOTO、ジェームス・テイラーたちに加えて、サーフ・ミュージックのカラパナも、湘南の風景に見事に溶け込んで、物語を盛り上げている。
この曲たちがあってこそ、この映画を永遠に、僕たちの心に刻み込んでいる、と言っても過言じゃない。
とにかく、この映画は僕の好きなものがいっぱい詰まっている。
レコード、サーフィン、ミニFM局、オーディオ、ラジオ、音楽……。
甘く切ない青春時代、と言う言葉がピッタリの映画で、エンディングの最後の最後まできちんと作られている。
この映画を見終った後、そこにいるのは、ただ感傷に浸る自分なのか?
よし、もう一度何かに打ち込もうと、悪あがきする自分なのか?
それは見た人に任せるとして、僕はいつまでも後者でいたいと願う。
何故なら、悪あがきこそが、青春の証しなんだから……。
-- 続きを閉じる --