『名探偵登場』 勝手にシネマ・サーフィン~8~
こんばんは、ロッカリアです。
「おいおい、この映画、王道って言いうより変化球じゃねえかよ!」と思われた方、正解です。
確かに、数々の名探偵をパロディ化して登場させてはいるけど、僕はこの映画ほどミステリー・マインドに溢れ、ファンを喜ばせる作品は少ないと思う。
何より、僕の中ではチャーリーとロイドを除くなら、コメディ映画の中ではNO1だとも思っている。
この映画、まず設定が怪しい。
ライオネル・トウェイン(トルーマン・カポーティ!!)と名乗る屋敷(この住所が22番地のトウェイン。トゥートゥー・トウェイン、チュー・チュー・トレインと言う言葉遊びになっている!)のホストから送られてきた招待状によって、世界の名だたる名探偵5人が「晩餐と殺人」に招かれる。
このゴージャスな内装の屋敷、探偵たちが到着する度に、入口の上から石像が落下すると言う洗礼があるし、呼び鈴は、押すと女の悲鳴が響き渡り、ドアを閉めて中に入ると、電気仕掛けの効果により、常に嵐の夜が演出されると言う遊び心満載の凝りようだ。
そして、探偵たちが全員揃うと、屋敷中の窓と扉は鉄の格子で外の世界と遮断され、理想的なクローズド・サークルを形成させる。
ディナーが始まると、ホストのトウェインが現れ、今夜の12時までに、この中の誰かが殺されると告げ消える。
しかし、12時になっても殺人が起こらない。
誰も死ななかったぞと、リビングの扉を開けるとそこにトウェインが立っていた。彼はそのまま倒れ込んでしまう。
そしてその背中には、ナイフが突き刺さっていた……。

こうして名探偵たちの推理合戦が始まるが、子供の頃からミステリーが大好きだったニール・サイモンの脚本は、一筋縄ではいかない。
まず、目の見えない執事に加えて、耳と口が不自由なメイド(コックと間違えて対応しているが…)が話をややこしくさせている。(見ザル聞かザル言わザル!)
ハメットの小説に出てくるサム・スペードのパロディ、サム・ダイアモンド(ピーター・フォーク)と、同じくハメットの『影なき男』のニック&ノラ・チャールズ夫妻のパロディ、ディック(デビッド・ニーブン)&ドラ・チャールストン夫妻。
チャーリー・チャンのパロディ、シドニー・ワン(ピーター・セラーズ)。それに加えて、ミステリー史上の禁じ手とも言える、ミス・マープルとポアロの共演をパロッたミス・マーブルズとミロ・ペリエ。この二人は劇中とは言え、舌戦を繰り広げるのだから、ニール・ダイアモンド恐るべし、である。
おまけに、当時作られたがお蔵入りになった別エンディングでは、ホームズとワトソンまで登場させたが、無名の俳優に美味しい所を持って行かれるのはいかがなものか?との声にカットさせられてしまった、と言う経緯もあるのだ。
この芸達者な俳優陣の中にあって、一際異彩を放っているのが、アカデミー男優賞受賞経験のあるアレック・ギネスだろう。
これも余談になるが、この映画の撮影中に次回作の脚本を真剣に読んでいたアレックだが、ニール・サイモンがその脚本のタイトルをのぞき見ると、そこには『スター・ウォーズ』と書かれてあったのだ!
このエピソードをニール・サイモンのインタビューから聞いて、僕は思い出した事がある。『スター・ウォーズ』が公開された当時、あの(アカデミー俳優)アレック・ギネスが何故SF映画なんかに(当時SF映画は漏れなくB級だった)出演したのか疑問に思ったものだ。
ニール・サイモンも同じことを感じていたのだろう。この『名探偵登場』に出演オファーした際、当然断られるものだろうと思っていたらしいが、アレックは「新しい役にどんどん挑戦して行きたい」とOKしたと言う。
そうか。
そう言うバックグラウンドを今になって知る事になるとは思ってもみなかった。(何か得した気分!)
話を元に。
この映画の中の謎は、決して観客に解き明かされる事はない、と断言しておこう。
と言うのも、この映画自体、実はミステリーへの挑戦になっているからだ。
どう言う事かと言うと、犯人の動機は、最後まで隠されているからだ。
ミステリーにおいて、動機はかなりの比重がある。いや、動機さえわかれば犯人も分かってしまうと言ってもいいだろう。
この何故?を、最後に犯人が語る場面は、粗悪なミステリー小説を読まされた読者の意見を代表している。
しかし、それでも犯人の本当の正体は分からず、犯人が分かるのは、最後のワン・カットだ。
この犯人の正体を見て、観客は「ええ~っ!?」と思うだろうが、実は映画を丹念に見て行くとちゃんとヒントが隠されている。
本当はここで種明かしと行たいが、そんな野暮な奴はミステリーの敵だ。背中を刺されて死んだ方がましだ!(僕はもう少し長生きしたい)
全編をミステリーのパロディで構築したコメディ映画。
時間が経つといつも「あれ、この映画の犯人誰だったっけ?」となるほど複雑なプロットが、僕の中のミステリー・マインドを永遠にくすぐり続けるのだ。
最後に、このサントラを手掛けているのは、僕の大好きなデイブ・グルーシンだ!(最高!)
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
« 『殺人ゲームへの招待』 シネマ・サーフィン~9~ | 秋はやっぱりミステリー! »
コメント
観たい!
僕の記憶の中に盲目の執事が受け取ったコートをコート掛けに掛けようとしてそこにコート掛けが無いってシーンがあるんですがこの映画ですかね?
子供の頃集めていた映画チラシの中でこの「名探偵登場」のチラシは結構お気に入りでした
この記事にも載っているタイトルの時に使われた紙の人形たちが屋敷の前に並んでいる素敵なチラシ・・・
【秋の夜長のミステリー】次回も楽しみにしてますよ~ マジ!
あ~観たい!
でも、昔見たときポアロやマープル、サム・スペードしかわからなくて・・・ なのに面白かった!
やっぱり観たい!
アマゾンで見たDVDのジャケットがあまりに酷くてガッカリです・・・
先日酔っ払って¥5000-落としたので買いません▄█▀█●
もうちょっと楽しみに取って置きます(^^ゞ
|―|/‐\|\/| #- | URL | 2011/10/09 00:57 [edit]
Re: HAMさんへ。
¥5000…。
痛いなぁ~そりゃ…。レンタルもあるから、そっちなら¥100で済むぞい。
チラシは雰囲気があって、私はオークションで落札したよ~。
DVDのジャケは最悪、話にならん!
でも、内容はHAMちゃんが憶えている通りだよ。
機会があったらぜひ見てね。
いつもコメント、ありがとう!
ロッカリア #- | URL | 2011/10/11 20:54 [edit]
一言、追伸
>DVDのジャケは最悪、話にならん!
非常に激しく同意!
売る気は全くなし・・・
|―|/‐\|\/| #- | URL | 2011/10/12 00:05 [edit]
Re: HAMさんへ。
例えば、昔どのレコードを買おうかアレコレ迷っている時に、「このジャケットには何かある!」と思ってレジへ直行したものだ。
いわゆるジャケ買いだ。
ま、その直感が当たったためしが無いが、それでもその素晴らしいジャケットが手に入っただけで満足したものだ。
次元は異なるかも知れないが、映画を商品として取り扱う時は、パッケージとしての商品価値は勿論、レコードのような付加価値も考えて欲しいと思っているのは、映画ファンなら誰も同じだろう。
前からいつも思っている事だが、DVDと、その映画のサントラをパッケージングして欲しいんだよなぁ。
昔は、限られたソフトで実験的に行われたが、今はもう夢の夢、だよなぁ…。
とにかく、売れ筋ではない映画のDVDは手を抜き過ぎか、或いはその映画の良さを分からずに扱っているのか、どちらかなんだろうなぁ…、寂しい。
ロッカリア #- | URL | 2011/10/12 23:22 [edit]
こんにちは!
ロッカリアさん、こんにちは。
コメント、非常に非常にご無沙汰ており申し訳ありません~!!
(でも携帯から楽しく拝読いておりました^^;)
もう間もなく、ロッカリアさんのお誕生日だなぁと思って
今日は寄らせていただきました♪
(もうすぐで)おめでとうございます!!
この一年も、ロッカリアさんにとって素晴らしい一年になりますように。。。
さてさて。
この『名探偵登場』ですが、以前ロッカリアさんの記事に出ていた時に「なんて楽しそうな映画なんだろう!!」とワクワクしたのがきっかけで、オークションでゲットした作品なんです。それで今回、改めてこちらの記事を読むことで「そうそう!本当にそう!」とまたあの楽しさが自分の中でジワリジワリと倍増されてきました。ありがとうございます♪
ロッカリアさんのイラストがもう!可笑しくて可笑しくて思わず笑ってしまいました。あの切手を貼るシーンをイラストにされるなんて・・・!!ステキです(笑)!
出演者の誰も彼もがこのパロディを楽しんで演じているように感じられて、どこを見ていいかわからなくなるくらいの豪華共演者にクラクラし、ミステリーの定番をおちょくったような「実は私が・・・・」「実はワタシは・・・・」というドンデン返しの連続技に大笑い、もう「映画」が好きで良かったなぁ!と大満足の一本でした。特に最近「ポワロ」「シャーロックホームズ」「コロンボ」「ヒッチコックアワー」を毎日のように観続けているので、よけいに面白かったです♪
また、ロッカリアさんのオススメ映画紹介を楽しみにしております。
これからもぜひヨロシクお願いいたします
マクビール #mHZ/BfkA | URL | 2011/10/16 13:54 [edit]
Re: マクビールさんへ。
どうもどうも。
コメントはこちらこそ御無沙汰で、わざわざすいません。(*^_^*)
お祝いの言葉まで頂まして、ありがとうございます!(また、憶えて頂いていてビックリ!)
『名探偵登場』は、ほんとにお気に入りの映画なんですよね。
気に留めないと、何が面白いんだろう?と言われる事もあるんですが、分かる人には分かって貰える、良く出来た作品なんですよね。
あのとぼけた笑いが最高で、特にミス・マープル(のパロディ)が車椅子で登場するシーンには、もう参りましたって感じ。
喜んでもらえて光栄です(ハハァ~ _○/|_)
あのどんでん返しも、ミステリーをトコトン知り尽くしたうえでのパロディで、思わずニヤリとしてしまいます。
最近はそんなにミステリーTVを見ているんですか!?凄いですね。
私は、最近ソプラノ・サックスを買ったばかりなので、これに夢中です。
この歳になっても、まだ夢中になる事が沢山あって、そう言う意味ではいい人生を送らせて頂いてます。
これも、やっぱり映画の影響が大きいだと、実感してます。
マクビールさんも、お身体に気を付けて、これからも突っ込んだ素晴らしい記事を書き続けて下さいね!
コメントありがとうございました!
ロッカリア #- | URL | 2011/10/16 23:23 [edit]
トラックバック
たまったビデオを整理しようと思って調べたら、ずっと前に深夜の映画劇場で放送されたのを録画してありました。 配役も豪華ですが、日本語吹き替え声優陣も豪華で賑やかです。 日本語吹き替え版待望論が大きいのもむべなるかな。 これは永久保存版ですな。 翌日…
20世紀少年少女SFクラブ・ネタバレ談話室 | 2013/12/09 21:35
| h o m e |